SL2その後(2015年3月18日VWBPE基調講演より)
2015年03月24日
2015年、3月18日に開催されたVWBPE(Virtual Worlds Best Practices in Education 仮想世界を最大限活用した教育実施例を紹介する会)で、リンデンラボ社のCEO、エッベ・アルトバーグ氏が基調講演を行い、改めてセカンドライフおよびセカンドライフ2について触れました。
アルトバーグ氏の基調講演についてはYouTubeの動画で見ることが出来ますが、著名なSLブロガー、ダニエル・ヴォヤジャー氏のブログでまとめられた、現段階でのSLとSL2についての彼の発言内容は大雑把に以下の通りです (ダニエル・ヴォヤジャー氏のブログはこちら)
■セカンドライフについて
-新人サポートをさらに改良したいと思っている
-SLが消滅、終了することはない
-SLの改良は続ける(チャットの改良、バグの改善、安定性の向上など)
-仮想世界に対する競争が激化しつつある。そのために常に先頭にいられるように努力をしなければならないと思っている
-使い易さ、物理特性やライティング、スムーズさやアバターの自然さの向上を考えている
-土地は有料だが、アイテムの売買については殆ど無料で行っている。土地価格を下げるのであれば、売買についての手数料を増やさなければならない。※ヴォヤジャー氏のブログではあっさり書かれているのですが、これについては実際の基調講演ではSL2、次世代プラットフォームではもっと何か考慮出来ないか考えているというようなことも述べています。
-昨年は6000万ドルの支払を取り扱った。週100万ドルのペースである。
■セカンドライフ2について
-SL2.0などとは呼ばず、とりあえず次世代プラットフォーム(Next Generation Platform)と呼んでいる ※口語表現ではNext Gen=ネクストジェン、と呼んでいます。
-すでに8ヶ月から9ヶ月、この開発に取り組んでいる
-30人以上のエンジニアと、それ以外の人間たちがこのプロジェクトに携わっている
-一番最初からモバイルでも使用出来るようにしたいと思っている
-2015年夏から、まずはMayaを知り尽くしているαユーザーに次世代プラットフォームを見てもらいたいと考えている。※これがMayaが次世代プラットフォームの基幹となる、という意味ではなく、飽くまでもこの段階で必要なテクノロジーなので、ということだけのようです。
-夏以降、操作性を改良した上でより多くの人達を次世代プラットフォームに招聘したいと思っている。
-SLの代わりとしてこの次世代プラットフォームで行こう、と決めるまでには数年以上かかると思う。
-リンデンスクリプトは使わず、既存のものを使う。エキスパートである人達が壁を感じることなく大いに活躍出来るようにするためである。※スクリプトについてはC#だと、アルトバーグ氏は述べていますが、これが最終的なものかについては不明です。
-次世代プラットフォームはオープンなものにしたいと考えていて、LL社が提供できない物はサードパーティが提供出来ればと思う。
-一般公開されるまでに、Mayaだけではなく、ブレンダーなどのアプリケーションをサポート出来るように考えている。
-次世代プラットフォーム参加の年齢制限は13歳以上とする。
-外界からのコンテンツを、違うフォーマット形式で次世代フォーマットに持ち込むことが出来るようにしたいと考えている。
-インベントリの中のものを一度に大量にやりとり出来るようにすることを考えている。
-次世代プラットフォームに必要なスペックについては、まだ発表出来る状態にない。
-次世代プラットフォームが一般に公開されるまで、まだ1年以上の時間が必要である。
-次世代プラットフォームでは、SIMが四六時中存在している必要はなく、無人の場合は保存されデータとして格納される形にしたいと考えている。※現在のSLで発生しているSIMの完全消失、ということを避けられるようにしたい、とのことで。
-ひとつのアカウントで複数のアイデンティティーを持つことが出来るようにしたい。これにより別アカウントを作る必要性が無くなるようにしたい。
-「次の『世界』はどのようなものになるか知りたい」とのことだが、私自身は『世界』という言葉は次世代プラットフォームに対して使っていない。Webのように接続した「経験」の集合体、と考えている。
-次世代プラットフォームは統一された地形を持たない。
-SLは次世代プラットフォームの一部だと考えている。SLは次世代プラットフォームの上に乗る感じだ。世界が増える、のではなく、プラットフォームが増える、という感覚だ。
-次世代プラットフォームでは地域ごとを接続させられるようにしたい。SIM越え(SIMクロッシング)をどのようにするかは考えていないが、ゲートウェイのようなものではないだろうか。
-デフォルトの土地はより大きなものになる。おそらく数千メートル四方、という感じだろう。
-ボイスチャット、3D音声に力を入れている。
-アバターは全く新しいものになる。SLのものを使うわけではない。
-スクリプト、アバターのシステムなども全く違うので、SLのアイテム全てを次世代プラットフォームに持って行けるわけではない、と思って欲しい。
-自動車などの物理特性はよりスマートなものになる。サードパーティーのエンジンを借りることも考えている。
テクノロジーについて全くの素人ですので、様々な間違いがあることは御了承ください。
あと、漏れている事項があることも……。
またこれより下は、個人的な見解も含まれますので、その点についても飽くまでも一見解であると御了承ください。
基調講演を伺う限り次世代プラットフォームは確かに単純に「SL2」とは違った位置づけのようです。
SLを継ぐもの、というよりは、SLを含めた新しいもの(「世界」とは違う、と言うアルトバーグ氏の意味するところは、正直自分にはイメージしづらいのですが)、ということがLL社が考えているSL2、次世代プラットフォームの方向性のようです。
今回のVWBPEで基調講演を行った、ということから分かるように、最近までの動向として、LL社はSLおよび次世代プラットフォームの教育的活用、という方面に力を入れるように動いているようです。これについてはSL等のエンターテイメント性を放棄してしまおうとしている、ということではなく、日本の外、ヨーロッパや北米において「セカンドライフ=過激なポルノの温床」というイメージが非常に強く、そのイメージを払拭しなければならない、ということが、彼らにとっての大きな課題のひとつでもあるからだと思われます。セカンドライフ、という呼称そものもがこうしたスティグマを負ってしまっている感が無きにしもあらずなので、次世代プラットフォームの開発はその偏見と取り組むことを念頭におかなければならない、という状況があることも現実でしょう。
今回の基調講演を聴いて、SL2、次世代プラットフォームについては、現在数多く存在するものの、横移動の出来ない状態でいるOpenSIMの仮想世界群をゲートウェイでつなぐ「ブラウザ」のようなものになる、のだろうか、と個人的には感じました。ただし現段階では既にFireStormなどのSLビュワーがこうした仮想世界のWebブラウザ的役目を果たしている、とも言えるので、そこに新たな技術革新を加え、次世代プラットフォームのフォーマットでの仮想世界群を作り出すことを計画しているのかな、とも。そういう意味では確かにSL2という認識は正しいものではなく、まったく別の「次世代プラットフォーム」、ということなのかもしれません。いずれにせよ仮想世界に関連した業界では、YahooのCloudPartyの買収、一連のFacebookのOculusLiftの買収劇、ゲーム機に関連した3D眼鏡の開発、3D眼鏡とOSの連動など、「次世代の仮想世界開発競争」が水面下で次第に活発化している昨今、LL社はSLで蓄積した「仮想現実社会を作り上げるだけではなく、そこにコミュニティを定着させ継続的な経済活動を行わせている」という経験を元にイニシアティブを新たに握れるのかどうか、という立場に立っているとも言える状態でもあります。
そうした無味乾燥なことを別にすれば、SL住民のひとりとしてはSL2、次世代プラットフォームの開発がどうあれ、現在のSLが少なくともSIMの減少に歯止めをかけ、安定した成長を続けていってくれることが、現段階では一番大事なことではないのだろうか、と思わずにはいられません。この基調講演ではなかったのですが、LL社でSLの技術開発の責任を負っているオズ・リンデン氏は、SLの継続的開発には意欲的である、ということを最近でも述べているので、果たして今後SLという老舗をどのように改良し続けていってくれるのか期待したいところでもあります。
なお基調講演については、他のSLブロガー、イナラ・ペイ氏により部分的にテキスト化されていますので、ここで漏れている事項については彼女のサイトを参照されるのも良いかと思います。
https://modemworld.wordpress.com/2015/03/19/vwbpe-2015-ebbe-altberg-lls-next-generation-platform/
Posted by KENGO at 18:34
│テクノロジー
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